木馬新聞

神戸のジャズ喫茶木馬の愛想も上々新聞です

2022-06-11から1日間の記事一覧

私ごとのこと 「哲さんの夢飛行」/ 木馬マスター

—パリ16区、ラ・フォンテーヌ街にある赤い扉のカフェ。ウェールズの緑のパッチワークの大丘陵。夕暮れのベネツィア、サンマルコ広場の弦楽カルテット。グラス片手に男たちは、哲さんの話に聞きほれ、まだ見ぬ異国を思い描いていた。ところがある日、哲さん…

セレブはよく褒める / 深川和美の本日休演

木馬の常連の90才代レディは、美しい白髪に白のスーツ、エナメルのパンプスでいつも超オシャレ。そしてマスターのことを「おじさん」と呼ぶ。マスターが大きな音出して荒々しい時「まぁ、おじさん、今日は暴れてるね、ホホホ」とニコニコしてる。そしていつ…

きんぞくひろうとかんようしょくぶつ / 上海太郎

「鉄さん、どうしたん?うずくまって。」「ああ、銅さん、昨夜から肩から腰にかけて痛くてなんか背中に鉄板入ってるみたいで。そういう銅さんも顔真っ赤やでえ。」「わてもなあ最近肌の調子が悪うてなあ、もうザラザラでなおらへん。」「おたがい働き過ぎか…

深夜のテレビ局にて / 安田昌子

「夏が来ると心霊もの」というお約束は、近年のテレビからすっかり消えた。今や曖昧なものを放送するとお叱りを受ける。しかし、私が毎週通う大阪の某テレビ局は、昔から「出る」とよく言われてきた。放送機器の強力な電磁波に霊が寄るんだとか…。元来怖がり…

違うお国柄 「ストライキ」

パリ在住の友人と8区にあるブロカント屋へ。タクシーが手っ取り早いということで乗ったら途中でデモに出会った。コンコルド広場から東方面はデモの人たちがびっしり、車はびくともしない。運転手は私たちに何かを言いながら煙草をふかす。「この国は、デモ…

長野・穂保地区のリンゴ農家 台風19号被害、2か月後の現実

【長野・穂保地区のリンゴ農家 台風19号被害、2か月後の現実】 台風19号が日本列島に上陸し、各地に被害をもたらしてからほぼ2カ月。千曲川の左岸を走る「アップルライン」に沿ってリンゴ農家が広がる長野県長野市穂保(ほやす)周辺を訪ねた。10月13日早朝…

「木綿のハンカチーフ」出雲学説考 / 久家恵一

吉例年末ライブ「青春の影〜私はあなたの青春そのもの〜」の木馬へ、観客はざっくり四十歳から七十歳、でもね青春のころのお馬鹿な、かつ真剣な思い出には不思議と共通項があるんですよね。観客の年齢差を感じさせない二時間の濃密ライブでありました。 その…

「レコード買います」―私のモノーラル盤収集記(2)―村上 謙

その2 中古ジャズレコードを買い始めて気付いた面白さがある。それは、ジャケットやレーベルに書き込みがあったり、かつての所有者のスタンプが押されていたりすることである。たまに演奏者のサインもあったりする。私もかつてカウント・ベイシーやクリス・…

「レコード買います」―私のモノーラル盤収集記―村上 謙

その1 ニューオリンズ・ジャズのトランペット奏者にバンク・ジョンソン(1879~1949)という人がいる。 アメリカンミュージック(AM)という海外レーベルから彼のCDがまとまって出ていることは知っていた。主なサイドメンはジョージ・ルイス(cl)やジム・ロ…

歴史の街対決 / 佐渡裕

オーストリアの首都、ウイーンの街のシンボルはシュテファン大聖堂。そこから1ブロックしか離れてないところに、僕が年のうちに5ヶ月を過ごすアパートがある。 この界隈は時間になるとたくさんの鐘の音が響き渡り、4月を迎え夏時間になると、冬の寒々とし…

冥王星への / 上海太郎

水・金・地・火・木・土・天・海冥・・・・・ 太陽の周囲を円軌道を描いてまわる太陽系の惑星達。 水星と金星は宵の明星、明けの明星と呼ばれ日暮れ時、あるいは夜明け前にその輝く姿を見ることが出来ます。 ドーナツのような輪を持つのが土星。一番大きな木…

北アルプス紀行 / 木馬店主

垂直に近い岩場に鎖と鉄ハシゴ。最後のハシゴを登ると山頂だが、その手前の岩場で背中に括りつけたピッケルが岩に引っ掛った。弾みで保っていた三点支持のバランスが崩れ咄嗟に左手一本で全体重を支える、その瞬間自身の過去の全てが走馬灯のように駆け巡っ…

コッチン / 深川和美の本日休演

「炊飯器のご飯がコッチンになるんです」とマスターが、東芝東京本社のお客様センターに電話したら「コッチンって何ですか?」と若い女性。「あなた、コッチンなんて他に言いようがないでしょ!周りの人に聞いてみてください!」とマスター。「申し訳ありま…

店主のエッセイ 『不在の行方』

ずっと昔の「木馬」は、生田神社の第一鳥居付近のビルの地下にあった。あれから木馬も42年になる。もうすぐ新しい年号になるが、今振り返ると良き昭和の時代でもあった。 ほの暗い店は大音量でジャズが流れ、紫煙がたちこめて店内の照明が霞むぐらいだった…

『私につきまとう二つの映画 / ルイ・マルとルルーシュ』

フランスでは映画が「第7の芸術」と言われるほどに、芸術作品として取り組む意欲が強いのか、作家も監督も娯楽性よりも芸術色を重んじるようだ。それで時おり小難しいものや、とても難解なものに出くわし、突放された気分にされることもある。 例えば、若い…