木馬新聞

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「木綿のハンカチーフ」出雲学説考 / 久家恵一

 吉例年末ライブ「青春の影〜私はあなたの青春そのもの〜」の木馬へ、観客はざっくり四十歳から七十歳、でもね青春のころのお馬鹿な、かつ真剣な思い出には不思議と共通項があるんですよね。観客の年齢差を感じさせない二時間の濃密ライブでありました。
 そのライブ、今年のハイライト(和田誠さんが手がけたパッケージに非ず)は、五年ぶりにマスターがマイクを持ち登場、作詞家・松本隆さんを前にして「木綿のハンカチーフ」を熱唱したことでした。マスターは前説で、「木綿のハンカチーフ」の恋人の故郷は、島根県の宍道湖あたりだと自論を披露しました。

♪ 恋人よ 僕は旅立つ 東へと 向う列車で はなやいだ街で 君への贈りもの 探す 探すつもりだ ♪

 東へと向かう列車は、京都でも神戸でもなく出雲、ならばその列車は、出雲市と東京を結ぶ深夜特急「出雲」だろうか。因みに、2006年に廃止された深夜特急「出雲」の時刻表は、出雲市駅発は17:39、東京駅着は翌朝の6:57でした。う〜ん、よくできたシチュエーションです。しかし、マスターの「木綿のハンカチーフ」出雲学説には、一点受け入れ難いことがありました。
 深夜特急「出雲」は、全席寝台車。東へ向かう列車で「恋人」がシャワー室でシャワーを浴びてベッドで寝むのは似合わない。ならば「恋人」は、どの列車に乗ったのか。
 大垣駅22:48発、東京駅05:05着の夜行快速列車「ムーンライトながら」。古い時刻表を見ながら、恋人の故郷、北陸本線の余呉駅から米原駅で乗り継ぎ、大垣駅から「ムーンライトながら」に乗車したに違いないと、思いは時空を超えて、探す探すのでした。