木馬新聞

神戸のジャズ喫茶木馬の愛想も上々新聞です

「天国と地獄」西田明夫

 二人の男が同じ日の同じ時刻に死ぬ。一人は劣悪な環境に生まれ育ち、止むに止まれぬ事情で殺人を犯した男。一人は裕福な家庭で育ち、何の苦労もなく一生を平凡に生きてきた男。二人は同時に審判者の前に連れて行かれる。
審判者は殺人を犯した男に天国の鍵を手渡し、平凡に生きた男を地獄に突き落とす・・・。
「俺がいったい何をしたと言うのか?」
「俺は何もした憶えが無い!」
「殺人を犯した男が天国でなぜ俺が地獄なんだ?」と、平凡に生きた男は審判者の前でわめき散らす。
審判者は男に向かって告げる。
「殺人は重大な罪である」
「しかし、彼は懸命に生きてきた」
「お前の言うとおり、お前は何もしなかった」
「悪いことはしなかったが、良いこともしなかった」
「お前は自分のためにも人のためにも生きてこなかった」
「だから、お前には地獄が相応しい」
・・・。
ぼんやりと、 ブリキでできたおもちゃの家を見ていて、 そんな内容のテレビ映画があったことを、不意に思い出す。それは昭和の時代にあった 「OUTER LIMITS」という名の、番組の中の一つ。

KONISHIDA文庫