木馬新聞

神戸のジャズ喫茶木馬の愛想も上々新聞です

歴史の街対決 / 佐渡裕

オーストリアの首都、ウイーンの街のシンボルはシュテファン大聖堂。そこから1ブロックしか離れてないところに、僕が年のうちに5ヶ月を過ごすアパートがある。 この界隈は時間になるとたくさんの鐘の音が響き渡り、4月を迎え夏時間になると、冬の寒々とし…

冥王星への / 上海太郎

水・金・地・火・木・土・天・海冥・・・・・ 太陽の周囲を円軌道を描いてまわる太陽系の惑星達。 水星と金星は宵の明星、明けの明星と呼ばれ日暮れ時、あるいは夜明け前にその輝く姿を見ることが出来ます。 ドーナツのような輪を持つのが土星。一番大きな木…

北アルプス紀行 / 木馬店主

垂直に近い岩場に鎖と鉄ハシゴ。最後のハシゴを登ると山頂だが、その手前の岩場で背中に括りつけたピッケルが岩に引っ掛った。弾みで保っていた三点支持のバランスが崩れ咄嗟に左手一本で全体重を支える、その瞬間自身の過去の全てが走馬灯のように駆け巡っ…

コッチン / 深川和美の本日休演

「炊飯器のご飯がコッチンになるんです」とマスターが、東芝東京本社のお客様センターに電話したら「コッチンって何ですか?」と若い女性。「あなた、コッチンなんて他に言いようがないでしょ!周りの人に聞いてみてください!」とマスター。「申し訳ありま…

店主のエッセイ 『不在の行方』

ずっと昔の「木馬」は、生田神社の第一鳥居付近のビルの地下にあった。あれから木馬も42年になる。もうすぐ新しい年号になるが、今振り返ると良き昭和の時代でもあった。 ほの暗い店は大音量でジャズが流れ、紫煙がたちこめて店内の照明が霞むぐらいだった…

『私につきまとう二つの映画 / ルイ・マルとルルーシュ』

フランスでは映画が「第7の芸術」と言われるほどに、芸術作品として取り組む意欲が強いのか、作家も監督も娯楽性よりも芸術色を重んじるようだ。それで時おり小難しいものや、とても難解なものに出くわし、突放された気分にされることもある。 例えば、若い…

月の光 / 深川和美の本日休演

二十三才の六月十四日、パリへ住もうと渡仏。バスチーユ広場に近いホテルを2泊取り、部屋に籠って住宅物件に電話をかけ続ける。3日目でようやくモンパルナスにある一つのアパルトマンを見に行くことになった。とても古い建物でアパルトマンに入るためのコ…